今のうちに撮っておきたい車両たち #1 東京メトロ8000系
いよいよ最終章へ
2026年現在、在籍数がわずか2編成となった東京メトロ8000系。半蔵門線に次世代の車両、18000系の増備が終盤を迎えた今、残された時間も残りわずかとなっている。40年以上にわたって東京の地下と地上を結んできた紫色の帯をまとった銀色の車体が、間もなく姿を消そうとしている。
「まだ走っているから大丈夫」と思っているうちに、ある日突然ラストランの告知が出る。半蔵門線8000系を記録するなら、今しかない。
半蔵門線を支え続けた功労者
1981年、半蔵門線の開業とともにデビューした8000系。東急田園都市線との相互直通運転を前提に設計され、以来、渋谷と大手町・押上を結ぶ動脈として都心の輸送を支えてきた。派手な特急車両でもなければ、観光路線を走る華やかな車両でもない。ただ黙々と、毎日何万人もの乗客を運び続けてきた存在だ。
当時としては先進的だったアルミ車体、電気子チョッパ制御。これらの技術は今では風前の灯火となっているが、8000系はその先駆けだった。地味に見えて、実は時代を切り開いた車両でもある。

今しか撮れない、この瞬間
撮影する上で注目したいのは、まず残存編成の少なさだ。すでにほとんどの編成が廃車され、運用に就く8000系を見かけること自体が貴重になっている。東急田園都市線内での運用も減少しており、かつては当たり前だった「8000系の中央林間行き」という光景も、今や幸運に恵まれなければ出会えない。
8000系特有の前面形状と、シンプルながら品のある紫の帯。後継の18000系とは明らかに異なる、昭和の薫りを残したデザインだ。
半蔵門線の北部終端駅の押上駅では、東武スカイツリーラインの車両や東急田園都市線の車両とも並ぶ。複数の事業者が交錯する東京の鉄道網ならではの光景に、8000系が収まる構図は、もう二度と撮れなくなる。

初めて撮った日のこと
私が初めて8000系を本格的に撮影したのは、2016年のGWのこと。はじめて一人で首都圏に遠征に行った際に東武伊勢崎線の新田駅で知り合いと雑談しながら複々線の外側線を駆け抜ける光景を目の当たりにしていたのが懐かしい。当時は「いつでも撮れる」という油断があり、特別な思い入れもなく、ただ記録として何枚かシャッターを切っただけだった。
それから6年が経ち、乗り入れ先の東武鉄道にて特急列車で活躍する東武100系スペーシアが登場時の塗装に戻るという話を聞いて、東武伊勢崎線にやってきた。気が付いたら新型車両の18000系の導入が進んでおり、8000系の姿が少しずつ減っていくのを実感した。あの時もっと真剣に撮っておけばよかった、と後悔しても遅い。
だからこそ今、機会を見つけては8000系撮影している。天気の良い休日、運用情報を頼りに半蔵門線へ向かう。何時間も待ってようやく来た8000系の編成を見た時の安堵感は、何にも代えがたい。

記録は、未来の記憶になる
車両が引退した後、残るのは写真と記憶だけだ。10年後、20年後、「そういえば昔、こんな車両が走っていたな」と振り返る時、手元にある一枚の写真が、その時代を鮮やかに思い出させてくれる。
8000系は、決して華やかな車両ではなかった。でもだからこそ、今のうちに記録として一枚でも残しておきたい。
そしてそれは、未来の自分や、これから鉄道を好きになる誰かに向けた、小さなタイムカプセルでもある。
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